きりのPFCSログ

企画「PFCS」のログです。

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【SS】虹の旋律

 

 月光、銀に輝く鉄塊の建築に下る。熱線、沥青アスファルトの陸路に返る。電脳の都、心城。それは銜尾蛇の首都であり、民の心臓であった。夜でも輝きを失わぬ景観は、他の国々と一線を画するものである。電気の信仰という異妙な文化が、眠らぬ街を具現化したのだ。精霊は根幹の電脈を張り巡らせ、妖怪は電子の土壌を耕し、人間は発明する。帝の位であっても、民の位であっても、発展のために身命を賭し築いたのは歴史の事実に他ならない。理想の研究、解明、開発。夢を夢で終わらせたくはない、種族を超えた意地がそこにはあった。熱を持った民は、時にがくに集う。今宵も繁華街に所在するクラブハウスには大勢の民が集い、その勢いを滾らせていた。墨鏡サングラスをかけた司会MCの掛け声がマイクを通じて響く。
「我々が待ち望んでいた王者は此処にいる、梁 迅律!」
 蹴り続ける鼓を武士の心音、鋭く鳴り響く楽器を剣戟の音と喩えるならば、それは戦の鬨と言っても過言ではない。暗室の中から青から紫にかかる卤素灯ハロゲンライトは呼ばれた彼の髪の色と重なる。飛び上がり、踊る衆を前にも動じぬ男の名は迅律シュンリーと言った。名の通り律動感溢れる曲目を得手とする作曲家、そしてディスクジョッキーであった。歓声と、高速で流れる照明と電子音楽の流れる空間で彼は曲を操る機械の操作を真剣に行っていた。一瞬も狂わぬ拍の流れは、彼の授かった異能に所以する。彼には拍の流れが見えるのだ。銜尾蛇の民は、電気から溢れた能力を決して人を傷つけるために用いなかった。或る者は人を癒やし、或る者は人を喜ばせる。度重なる権力の争いの末に見つけた、発展という名の答えは文化にも浸透していたのだ。
 ヘッドホンを肩にかけ、薄着を纏い鋭い眼差しでターンテーブルを回す迅律。梁姓アスラーンの特徴である隈は彼が睡眠を忘れリハーサルに打ち込んだ証であった。彼は用意周到で挑むところがあり、勢いだけで進もうとする弟子をよく叱っているところがあったものだ。
「彼に、民衆を萎えさせるような狂いは無い。彼に狂っているところがあるとしたら、それは彼の生き様だろう。」
 そう、とある音楽関係者は語っていた。まだ若い彼の過去を知るものは少ない。だがその短く色濃き人生が彼の旋律を作っているのだ。そこには幾多もの出会いと、出来事があったのだ。彼の人生の譜面を綴るは国を超えた交流と、記憶に眠る発見の連続した音符であろう。踊る民衆は知らぬ。しかし、その音楽を肌で味わい、悦ぶのだ。

 ――奏でるは、人と人との繋がりの、七色に輝く情景也。集え、音楽の断片よ。


 交流小説もちょっとしたものなら作っていこうかなあと思います。よろしくね。